卒寮生から
自己紹介
新入寮生・在学生の皆さんこんにちは! 卒寮生で現在は社会人をしているものです.
私の在寮期間は3年程で, 卒寮して6年程経ちますが, まだまだ熊野寮の魅力に取りつかれたまま足を運び続けています.
皆さん, 寮に足を踏み入れた時, 壁一面に張られた歴史を感じる張り紙や壁の落書き, タイムスリップしたような古さと乱雑さに驚かれたと思いますが, 入寮してからは, 住めば都. マンガや小説の中に飛び込んだような, 事実は小説より奇なりを超えた, 普通の一人暮らしではできない非日常が熊野寮にはあります.
卒寮した熊野寮生とは普段連絡を取り合ったり, 一緒に頻繁にあったりするわけでなくとも, 会うと昨日会った友達の様に話せます. たまに会う時に近況を報告しあっていると, 各々の業界で活躍されている人が多いので, 異業種のホットな話題や自分の仕事のヒントにもなるような情報など聞けてとても刺激になります.
また, 卒寮しても寮にたまに足を運ぶことで, 在寮生との新たな交友のネットワークが広がり, 最近の大学生が何に関心があるのかとジェネレーションギャップの理解にも役立っています. 笑
間違いなく一生の思い出になるので, 皆さん入寮したら是非積極的に学問だけでなく, 自分が面白いと思うことをやってみてください!
自治に参加する意義について
交友を深め, 面白いことをする事と同様寮を語るうえで外せない皆さんにやってほしいことが自治活動です.
私の在寮中に携わった仕事は厚生部でした. とりわけ, 今でもいい経験になったと思っている事が, 寮内に長年堆積した粗大ゴミの廃棄を企画したことです.
結果, 10t車3台分のゴミを寮内から撤去ですることが出来ました.
おかげさまで, 私も就職活動の時に受けた企業にうまいこと自治の経験をアピールし, 内定を得ることが出来ました .
私が熊野寮に入寮した2011年は, 当時は熊野寮は今の様に近所と連帯フェスをやるような地域とオシャレで社会性あるイベントをやるような雰囲気はなく, 近所からの評判は最悪でした. 丸太町通り沿いに面したC棟の一階の窓はゴミの山で埋め尽くされ, そのゴミの山に引き寄せられるように周辺の不法者が不法投棄を置きに来て山が膨れ上がる悪循環でした. 周辺には腐海のような途轍もない異臭が漂い, 洗濯物にゴミの腐臭が付くため住人は窓を開けることはできませんでした.
どうしてこのような腐海が出来ていたかというと, 私が入寮する前にアフガニスタンから来た年輩の研究者( 以下B氏) という人に色んなものを集めてきてしまう収集癖があったからだそうです. その方の在寮当時はC棟を1Fまるまる占拠するほどだったらしい.
ある年, B氏が老衰からか寮の一室で亡くなられているのが発見されました.
その後, 収集物で占拠されていた部屋を居住スペースにしようという開拓の動きの下, どうにか人が住めるスペースはできました. しかし, 居室内から放り出された遺物がC棟1Fの窓から乱雑に出されたのか, B氏が外にも収集物を置いていたのか, とにかく, 外の窓の外にも食堂にも中庭にも, 彼の遺物と, 集まったゴミが溢れ, スラム状態でした.
B氏の遺品に限らず, 熊野寮のような大人数が居住するスペースだと, 共有物か個人の所有物か, わからず処分に困る物が多いです. 皆でブロックからお金を出し合って直すものか, 所有している個人に処分を請求する物か, それとも寮自治体か, はたまた大学に責任の所在があるのかわからず, 曖昧に処理されず残ってしまうのでしょう.
また, 卒業と共に学生が入れ替わりする学生寮という特性上, ノウハウを持っている人が数年で入れ替わり, 蓄積されにくいという問題点もあります.
さらに, 皆がみんな自治活動に全力で全ての時間を費やせるわけではなく, フリーライダーと呼ばれる自治の仕事をしない人がでる. 結果として仕事ができる人が研究時間や余暇の時間などを削り自己犠牲せざるを得なくなり疲弊したり, 仕事を引き継ぐ後輩がおらず4回生や院生になっても世代交代できず仕事をする人もいました.
先に挙げた例にも漏れず当時の厚生部清掃局も, かつて粗大ごみ回収が行われていたが, 卒業とともにノウハウが失われ, 4回生と院生のたった4名しかいない状況でした.
まずは, 仕組みやマニュアルがなければ自分たちの手で作るしかない.
粗大ごみ回収の5社くらい見積を取って少しでも安く済ませようと交渉を進めました.
費用を安く済ませられるように, 人時は寮生の人手で賄うためにブロック周りをしてお願いをして回ったり, 地道にボテッカーを張って周知したりしました.
次に, 忙しい寮生を動いてもらえる仕組みを作るか, 別の仕組みを利用しようと起案.
粗大ごみの決行の日, ゴミ回収の自治活動に参加してくれた人に炊き出しや銭湯券を配布してみんなが楽しめるイベントの様に企画したり, 寮生で手の回らないところを, 清掃員さんの活動内容を見直してもらうよう大学の学生課に交渉し, 重い清掃用具を各ブロック持って回らなくて済むように掃除用具入れを設置する予算を取ってもらうように交渉しました.
結果, 10t車三台分にもなった丸太町通りの遺品と不法投棄はきれいになくなり, 住人が異臭に悩まされず, 窓を開け放つことが出来るようになり, 周辺住民のゴミ屋敷のスラムというレッテルも次第に消えていくようになりました.
自治活動で得たが卒業後役立っている点
この粗大ゴミ廃棄企画から私が得られた経験は大きいです.
まず, 100%京大生で構成されるコミュニティで, 各自が自分の専門分野からアイデアを出してくれ, 魅力個性溢れる人たちと仕事をする刺激的な機会は, この先社会で出会えることは稀有でしょう.
「学生の本分は学業だ」と自治活動から離れる人もいるが, もったいないです.
今社会人になって管理職になっても熊野寮の仕事から学びを活かせているものは多くあります. 企画を通すまでの, 文章作成, 人への伝達, マネジメント, 入念なブロック廻りや主要人物への根回し, 後進育成などのPDCAサイクルがここでは高いレベルで経験を積めました. それはうまくいっても, 難航して苦労しても, どこに行っても活かせる, 立派な無駄ではない経験. 400人以上所属しているコミュニティの自治はなかなか経験できるものではありません. また, 自治活動に参加することで, 自分の生活環境である熊野寮を改善できるというメリットもあります. やればやるほど住みやすくなる.
もちろん一人の手には余る課題もたくさんあります.
そういう時にどうしたら各々学業や研究などで時間が多く割けない中, 少しずつ無理のない範囲で活動をしてもらい, 自分たちの生活環境をよくしていくか仕組みを組んでいくかという, 腕の見せ所でもあります.
例えば, 今まで自治活動のシフト当番を組むのに, 手作業で係りの人が考えていたのを, 自分の専門を活かしてアプリを開発して効率化したブロックの例などもあります.
どうしたら大変な労力と時間がかかる作業が楽になるのか, 自分の学びと生活の場の問題をつなげて, みんなが困ってることを解決できるかという課題は, 卒業しても延長線にあると思います. とにかく, 住んでいる環境は自分たちの手で変えることが出来るし, 寮で過ごす日々は, 学問, 自治活動, 交友関係どれひとつとっても無駄なことはありません. 是非, 熊野寮での生活を精一杯楽しんでください!
(文:S. Yお酒もってくるお姉さん)